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それから数日後、私の熱はすっかり下がって体調も回復した。これは大げさなぐらいサクが看病してくれたおかげ。


「鉄さん。バイト休んじゃってすいませんでした」

久しぶりのサンセット。私は迷惑をかけてしまった鉄さんや他の従業員たちに謝って回った。


「全然いいよ。むしろ風邪移るの期待してた。俺も仕事休みたかったのに」

なんて、鉄さんは店長のくせにそんなことを言って私を笑わせてくれた。


サンセットは通常営業で、穏やかな日常が戻ってきた。ひとつだけ前と違うのは、心なしか胸がソワソワしていること。

それは今日仕事が終わったら、サクとあの公園に行く約束をしているからだ。


サクの過去、サクを苦しめている原因が明らかになる。

きっと私以上にサクの方が落ち着かないだろうけど、それでもやっぱり緊張してる。


「麻耶ちゃん。病み上がりなんだからあんまりムリすんなよ?」

お皿洗いをしている私に鉄さんが声をかけてくれた。


「大丈夫ですよ。完璧に治りましたから」

私は休んだ分を取り返すように、お皿を素早く洗って見せた。


「そっか。でもこの間は本当に驚いたよ」

鉄さんはシンクに寄りかかり、隣で話はじめた。


「……俺さ、この5年間何度も亮に電話したんだ。だけどあいつは一度も出なかった」

「………」

「それなのに留守電に麻耶ちゃんが倒れてるって言ったら折り返してすぐに電話してきたよ」

鉄さんは複雑そうな顔で苦笑いを浮かべている。