たったの一秒が永遠みたいに長く感じた。そしてサクは自分の戸惑いを隠すように声をだした。


「ご、ごめん、ちょっとビックリして。……うん、大丈夫」

サクはオレンジジュースを置いて、私に不自然な笑顔で笑った。

なにが大丈夫?

ねえ、なにが?


「そろそろ帰ろうか。暗くなって来たし」

サクがそう言って立ち上がろうとした瞬間、私はサクの腕を掴んだ。


「ムリして笑わないで」

自然とサクを掴む手に力が入る。


笑いたくない時は笑わなくていい。

その隠しきれない感情をムリして胸に押し込めないで。


「……ノラ、なに言って……」

サクがまた作り笑顔をしようとしたから私は無理やり腕を引っ張って隣に座らせた。


「私ってそんなに頼りない?サクにムリして笑顔を作らせるほど頼りないかな?」

サクと出逢って、私は何度も何度も救われた。

自分がサクにとってそんな存在になれるって自惚れてるわけじゃないけど、いま腕を掴んでるのは私だから。

傍にいて、一番近い場所にいるのは私だから。

少しは頼ってくれてもいいでしょ?