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サクは私の長い話を黙って聞いていた。

私はただ天井を見つめながら淡々とあの日のことを打ち明けて、本当は今も胸に手を当てるとドキドキしている。

この鼓動は臆病な証。

また逃げたくなって、全て嘘だったらいいのにと叶うことのない夢を見る。


「……私って本当にバカでしょ?」

これは自分自身に言った言葉。


子どものくせに、気持ちだけは子どもじゃなくて。悲しいことを全部ひとりで胸に抱えて、それを背負わなきゃってプライドだけはちゃんとある。

なのに立ち向かう勇気なんてなくて、結局逃げることしかできないただの子ども。


よく考えれば相手にされるはずなんてなくて、立場だって全然違う。

大人の嘘すら見抜けないのに本気になって、溺れた私は本当に浅はかでバカだったと思う。


「ノラはバカじゃないよ。ただ一生懸命だっただけでしょ?」

暗闇の部屋の中でサクの優しい声が耳に響く。


私、一生懸命だった?

遊びだとか、みっともないとか、恥ずかしいとか言われたよ。

でもね、私はたしかにバカだったけど、ただ一生懸命信じて恋をしていただけ。

いけないことだったけど、間違ったことはしてないよ。


私は溢れる涙を堪えきれず、わざとサクに背中を向けた。


「ノラ?」

私はサクの匂いがする布団に顔を埋めた。


サクは私の話に同情したり哀れんだりしない。

軽い感情で慰められるより、よっぽど優しさを感じた。