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先生の名前は横井 和也。年齢は30歳。

とても気さくでよく笑う人。

私はいい先生だなって思う程度で、それ以上の感情は存在しなかった。

でも入学して半年が過ぎたある日、物理のレポートを提出し忘れて、放課後先生がいる物理室に行った。


――ガラガラッ。

物理室のドアを開けると先生がなにかの作業をしながら椅子に座っていた。


『お、北原』

その時の先生は黒ぶちの眼鏡をしていて、いつもと少し雰囲気が違う。

理由を聞くと『普段はコンタクトなんだけど、
ドライアイだからすぐ目が乾くんだよ』って笑った。

そのウサギみたいに真っ赤になった目と初めて見た眼鏡姿に少し目を奪われた。


『……先生、これレポートです』

私はレポートを提出して物理室を出ようとした時、先生に呼び止められた。


『北原!前の授業で使った道具の後片付け手伝ってくれないか?』

『………』

正直、どうして私が?って思った。

でもこのあと予定があるわけじゃないし、私は渋々後片付けを手伝うことにした。


『悪いな。前の授業で実験だったんだよ』

『……そうなんですか』