サクの言葉がどこまで本心か分からないけど、私はサクを信じるって決めたからどんな言葉でも信じるよ。

思えばサクはいつだって私を真っ直ぐに見てくれていた。

それでいつも言う言葉も真っ直ぐだった。


もしかしたら、私の方がサクより自分の感情を隠していたのかもしれないね。

サクのことは信じてるけど、自分自身のことは信じてなかった気がする。

そんな大切なことに今さら気づいたよ。


だから今日はちょっとだけ素直になってみよう。

今まで言えなかったことを。


「ねえ、サク。初めて会った時、私泣いてたでしょ?」

「うん」

「あれは悲しいことがあったからだけど、半分はサクの歌があまりに綺麗だったからだよ」


感情さえも置いてきたと思ってた私にサクは一瞬で感情を返してきた。

それぐらいサクの歌はすごいってこと。


「そうだったの?じゃあ、ノラが泣いたのは半分俺のせいだね」

サクは冗談っぽく言ったけど、ちょっと顔は嬉しそう。


「あの時サクに会ってなかったら多分もっとツラかったと思う」

あてもなく街をさ迷って、本当に野良猫みたいにうずくまったままだったよ。