着いた先は中央公園。

もちろんサクはギターを持ってきてないから歌う目的じゃないみたい。


「こうして見ると本当に歌ってる人が多いね。いつも歌う側だから気にしてなかったけど」

サクがなにを考えてるか分からない。

歌わないならなんでここに来たの?


「ちょっと座ろうか」

サクはそう言って、いつも歌っている場所の近くにある噴水に腰かけた。


私も黙って隣に座ったけど、内心は少し怖い。
こんなに改まって隣に座ることなんてないし、なにか私に話があるのかな。

もしかしてそろそろ家に帰れとか言われる?


「ノラ、こっち向いて」

私が恐る恐るサクを見ると、おでこに鈍い痛みが。


「なに難しい顔してるの?またひとりで色々と考えてるんでしょ?」

それはサクのデコピン。なんだかそれで私の緊張が少しほどけた。


「……色々と考えてるのはサクだって同じじゃん。歌だって全然歌おうとしないし」

ああ、また嫌な言い方しちゃった。べつに歌は強制的なものじゃないのに。でもこんな私の言葉にサクは優しく微笑んだ。


「うん。考えてた。色々とね」