起こすのも可哀想だし、気持ちよさそうに寝てるからこのままにしておいたほうがいいよね。明日は仕事が休みだって言ってたし。

私はいつもサクが使ってる布団をベッドの横に敷いて、今日はここで寝ることにした。


電気を消して布団の中に入るとサクの匂いが。

こんなことを言ったら今度は犬みたいって言われそうだから絶対に言わない。


隣でサクの寝息が聞こえる。

いつもは逆だけど今日は私が下だから、ベッドにいるサクの顔がよく見えた。

無防備で寝てる姿ってなんだか可愛い。

私はサクに近寄りベッドに顔だけ乗せてみた。こんなにサクの顔が近いのは初めてだし、普段なら絶対できない。


本当にこうやって見ると寝顔が子どもみたい。

私の好きな泣きぼくろをちょこんと触ってみたけどサクは眠ったまま。


私の知らないサクはなにを見て、なにを経験してきたの?

あの笑顔をなくしてしまうほどサクを苦しめたものってなに?

咲嶋亮じゃなくてサクとして生きる今、毎日なにを想っているの?

暗闇の中で私はサクの寝顔を見つめたまま問いかけた。


「……ねえ、亮」

私の知らないサクの名前を呼んだ。


「……――……」

サクが眠ったままなにかを言った気がした。

小さくてよく聞こえなかったけど、その代わり……。


サクの目から一筋の涙が流れていた。