「待ってろよ!今すぐに土産をつくるからな。雪那にやろう」
「は、母上に…ですか。あまりそういうのは好まないかも、しれません」
先日雪那に射たれた兎を重初はあげていた。
重初の手前、嫌な顔はできないが彼が満足そうに帰った後に雪那は声を殺して泣いていた。
そんな母親の姿を見た秀実は悩んでいたのだ。
「何を言うか、秀実。雪那は俺の兎に喜んでおったぞ」
そう、重初は悪気があって言っているわけではないのだ。
それが何より質が悪い。
「このヤタガラスに殺せねぇ獲物はねぇよ」
「そうでしょうが……」
ヤタガラスほど危険な火縄銃はないだろう。
むしろ狙われた動物たちに同情してしまうほどだ。
「御託はいいから、お前はそこで待ってな」
「あっ…!重初様!」
そう言って重初は森の奥へと消えて行ってしまう。
待ってろ、と言われたからには待つしかない。
一度重初へと手を伸ばすが、届かないのは百も承知でその手を握り締めてから下ろす。
母親がまた悲しむ顔を見なければならないと思うと何とも言えないが、とりあえず今はその後の雪那の対処を考えた方が良さそうだ。
だいぶ森の奥まで来ているため、草木の繁りが大きい。
その辺をガシガシと掻き毟(むし)ったところで手頃な石を見つけた。
重初様がお帰りになるまで、ここで待つことにしよう。
秀実はその石に腰掛け、豊かな自然の中から漏れる小鳥たちのさえずりに耳を澄ますのであった。


