私は傀儡になってしまうまでの重初様のご様子をただ見守ることしかできないのだろうか。
それは堪え難いことだし、何より歯がゆい。
今でさえ、動物を狙うときの重初の瞳は恐ろしいほど鋭いのだ。
全てが奪われてしまうまでそう時間はかかるまい。
ならば、私はどうこの方をお守りすればよいのだろうか。
雑賀一族の家紋を背負う重初の背中を見つめ続ける。
八咫烏よ─────
お前は我が一族を守るためにいるのではないのか。
我が主を狂わすために存在するのか。
普段重初に対して弱気な態度をとっている秀実だが、主を想う志は誰よりも強い。
───いつまでも…
もし貴方が傀儡となってしまわれたときでも…
私は追う背中、そして守る背中を見失うことはありません。
「重初、様……」
「秀実。今日も大物が獲れそうな予感がするぜ!」
秀実が重初を呼ぶと、彼は話し掛けられたのだと思ったらしく、無邪気に笑って振り返って言った。
その笑顔は、元服以前のそれと何ら変わらない。
ヤタガラスを持ってもなお、彼には変わらないものがあるということだ。
そのことに多少なりともの安堵を浮かべながら、秀実は結局自分が狩猟についてくるのを主は嫌がっているわけではなさそうだと確信する。
嫌でしたら、ヤタガラスの銃口をこちらに向けますもんね……。
野生動物を睨んだときの瞳で見られた状況が浮かんできて、秀実は身震いした。


