重初の持つ痣は初代雑賀孫市にもあったというもので、彼も旧型の火縄銃『ヤタガラス』を使うことができた。
否、初代の使っていた南蛮由来の火縄銃を今現在まで保管してあると言ってもよい。
初代と似ているところがいくつも存在することから、重初は家の者より『先祖返り』だと囁かれている。
そんなふうに見られる重初ではあるが、一方で距離を置かれてしまわれていることを秀実は知っていた。
───『ヤタガラスの約束』
強力な力を発揮する代わりに使用者のヒトの姿を喰らうという契りだ。
徐々に蝕まれていくその火縄銃を手にするかつての雑賀孫市はいなかった。
書簡によれば、初代雑賀孫市はあるべきヒトの姿を無くし、ヤタガラスに操られた傀儡になってしまったらしい。
実際にその姿を見た彼の息子は『生きた屍』と評している。
あまりの恐ろしさに息子は代々にわたりヤタガラスには触れぬように伝えよと遺言を遺す。
だが、重初の父重朝は彼が生まれる前にこの世を去ったために遺言を伝えることは出来なかった。
当主となる雑賀一族の者だけが知る遺言のため、他言することは一切ない。
誰も知らない魔の火縄銃に出会った重初。
彼が彼らしくなくなっているのを秀実は感じ取っていた。
これまでの情報も、そんな重初を心配して独自に調査した結果だ。
そんなことから、周りにいるとその『約束』に囚われてしまうのではないかと思われているのだ。
敬遠する家臣や雑賀衆の生き残りが彼を見つめる目はまさに関わりたくはないというものであった。


