その痛み、今ここで分かち合えたのだ。
重朝との唯一の絆が孕み子である。
死別した愛しい夫の忘れ形見。
この子だけは、わたくしが死しても生まれさせます───
美祢の想いの結晶とも言っても過言ではない、玉のような男の子はきゃっきゃっと笑う。
それを見た乳母は疲れたように笑った。
「父も、母もいないこの子に…一体何が残っているのだろうか」
何も無いではないか。
この子の進む道を指し示す存在が必要なのに……!
「長井様…」
横から控えめに乳母を呼ぶ声がする。
絶望に浸る乳母が乱れた髪の隙間から声のする方へと視線を向けた。
「あの……、若様の腕に…痣のようなものが」
「痣ですって?」
赤子を抱いていた女中が神妙な面持ちを隠せないといった表情で頷いた。
「痣って…、まさか生まれたときにできてしまったものかしら」
「いえ…。それにしてはさほど新しいものとは思えませぬ」
女中は赤子を乳母に見るようにと差し出すので、彼女は半信半疑の気持ちで赤子を覗き込んだ。


