「なるほど、わかりました」
秀実は一瞬重初に目を細めて一見した後、深い息をついて瞳を閉じた。
「……やはり、男だけでなく女の事情も精通しておくべきなのですね。痛感しました」
「女の事情?」
確かに、男の事情──つまり政情には常に敏感でなければならない。
ただ呆けている政情に疎い者はすぐに他国に潰される。
その良い例が今川義元ではないだろうか。
彼は公家に憧れたばかりに、領土侵攻を自らが公家になるためだけに考えた。
義元には優秀な軍師がいたので一時は勢力を格段に上げたが、その軍師が逝くと彼は桶狭間で討ち取られた。
何と恥ずべき武士(もののふ)だろうか、いや武士にも公家にも中途半端に位置した男だ。
そのような男にはならないと決め、政情には敏感になっていた自分だが、秀実は女の事情まで理解しておくべきだったという。
重初は女に興味がない分、そういったことには大変疎い。
それが一族の存亡に関わることではないとわかっているので、あまり知ろうとはしなかった。
もっとも、千とまみえたときにはただならぬ高揚感に見舞われたが。


