雑賀孫市重初<仮>





赤子の産声が『穢れ』た母屋の中に響きわたる。




「美祢、男だよ!あんた頑張ったなぁ!」




美祢の乳母は汗だくになった彼女を労りながら優しく頭を撫でた。


そんな美祢は嬉しそうに虚ろな瞳を揺らす。






「よかっ…た。これで重朝様の、とこへ……行けるわ」



「な、何を言っておるの!あんたはこれからも生きなきゃ駄目だからね」





乳母は必死にそう訴えるが、美祢はただ笑ったままだった。





「重朝様の分、あんたが生きなくてどうするのさ!」



「わ、わたくしの分はこの子が生きてくれます。そう……仏様にお願いしたから…」



「………お願いだよ、生きておくれ。今あんたが死んだらこの子は誰が育てるのさ」




「そうね…」





「だろ?この子にはあんたが必要なんだよ。わかるだろ、美祢」




「えぇ、わかります。でも……ごめんなさい───」





虚ろな瞳に生気が消えた。





「美祢っ!?」






次にはゆっくりと瞼が閉じられ、美祢は永い眠りにつく。




重朝が次第に病に侵されていく姿に美祢は心を痛めていた。



彼の痛みを分かち合えたら、と何度思ったことか。