先ほどよりも相手は近づいてきている。
だが、こんな森の奥深くまで来るという女とは一体何物だ?
くの一にしては気配を感じすぎるし、一族の者ならこんなにヤタガラスが警戒しないはずだ。
「あんた、誰だよ。言っとくがあんたの気配はバレバレだぜ」
思い切って気配する方に声をかけてみた。
こういうのは先手必勝でもある。
何もわかっていない女なら尚更言葉という壁で奴を塞いでしまった方がいい。
返事は無かった。
代わりに、急に気配が遠くなる。
それと同時に草を踏む音が早くなった。
「ちっ。逃げようってか!」
そうはいくか。
重初は音のする方へと駆け出した。
道なき道を進み、両頬には小枝が引っ掛かって無数のかすり傷をつけていた。
しだいに人影が見えてきた。
遠巻きにだが、この女は髪が大変長いように見えた。
それに雅な着物がその長い髪から見え隠れする。
どうやら高貴な女のようだ。
どこかの姫さんなのかもしれない。
それならば何故そんな女がこの森に─────
色々考えていたら彼女の背後まで追いついた。
綺麗に染められた着物の袖を掴んだ。
「あっ……」


