見開いた目を、閉じる隙なんて無くて。
キスしてるんだって、理解する余裕も無くて。
ただ呆然と、固まったように動けなかった。
ゆっくりと、離れる唇。
伏せていた翔ちゃんの瞳と目が合って、カァッと顔が熱くなった。
そして、
「…ぶはっ、スゲー真っ赤!」
―――――笑ったんだ。
翔ちゃんが、笑ったんだ。
瞬間、見開いた目にジワーッと涙が滲んでく。
どんどんどんどん、溜まって。前が見えなくて。
せっかくの翔ちゃんの笑顔……見たいのに。
視界が歪んで、胸が締め付けられて、上手く呼吸が出来なくて。
夢じゃないのかとまで、思ってしまったんだ。


