スカートの裾を握り締めて、薄汚れた上靴の爪先を見つめる。


遠くから野球部の掛け声が聞こえるくらいで、他には何も聞こえない。


そんな静かな沈黙の中、翔ちゃんの小さな声が響いた。



「…何だそれ」



ドクンッ……。


冷たい声。もしかして、嫌われ……



「……え、何してるの?」



目に映った光景に、気の抜けた声が漏れる。


恐る恐る顔を上げると、そこには両手で頬を掴んで、思いっきり左右に引っ張る翔ちゃんの姿があった。


綺麗な顔が台無し。ていうか本気で、何をしてるのですか?



「翔ちゃんせっかくの美形が崩れてますけど」


「ほれれひーんだほ」



解読。恐らく『それでいいんだよ』。なぜ?