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「……全く、石松は単なる議員秘書のくせに、事務所の主である俺の事はまるで考えないからな」


 藤井が降りる際に、そうぼやきながら、車を離れる。


 俺も一度あの秘書と顔を合わせたことがあった。


 政治家の秘書なのに盆暗で、政策など何も勉強してない。


 まあ、バカなど相手するだけ無駄なのだが……。


 車に乗り込んだまま、スマホを取り出す。


 タッチ式のパネルに触れながら、いろんな情報を見続ける。


 さすがに永田町は危ない感じだった。


 岩原逮捕後も、政治家たちは必死になっている。


 自分の権益を守るために、だ。


 藤井の事務所は実質、石松が取り仕切っている。


 俺も思っていた。