「ちょっと塩味ついてるからいけます。けど、味なしでもいけますよ」

「へー、優秀!」

「普通ですよ」

 彼は機嫌よく笑った。

「この前式場を見に行ったんですけどね」

 そう話題を変えられると、わりと平常心でいられず、無心を装ってしまう。

「どこかいいところあった?」

「迷います。たくさんありすぎて。彼女も迷うし」

 吉永は弁当を見たままだ。

「……それにしても、君が結婚するなんてね。プロポーズとかどんな感じでしたの?」

 私はにやけて聞いた。

「まあまあ、そこは……」

 苦笑して、前髪をさらりと払う。

「だって最初は全然しそうになかったのにね。しないの一点張りだったじゃん」

「まあ、ねえ……けど彼女も年だし」

「私と同じ年だもんね。私ももう子供がいるし、結婚したいよねえ」