「うん。橘君はイケメンよ。
 だけど林君の方がカッコ良い、かな?」

「なんで!」

「さあ?」

 自分でもよく判らない。

「橘君は、なんでも簡単に出来ちゃうけど、林君は、一生懸命だからかな?」

「それ、同情?」

「違うわよ!」

「じゃ、やっぱり好きなんだ」

「なにそれ!」

 恥ずかしい!

 急に腹が立った私は、ほほを膨らませて、逃げる橘君を追いかけた。

 この時は、なんで怒ったのかは判らなかったけれど。

 今ならわかる。



 林君から目が離せなくなったあの瞬間から。





 私は、林君に恋に落ちたんだ。



  〈了〉

H24.9.2
本文文字数:1085
(書き下ろし)