花火よりも側にいて

その時、前後に揺れるゴンドラ。網かけのところから強い風が吹き込んでくる。ぐらりぐらりと揺れる観覧車に有里は不安な顔をした。


「……落ちないよね?」


「んー、たぶん」


曖昧な西田先輩の言葉に有里は顔を俯ける。


その間にも、ゴンドラはぐらぐらと大きく揺れ続けた。強い風が髪の毛を巻き上げて、首もとに涼しい風が当たる。


「何、怖いの?」


「…………」


「有里?」


「……怖いです……」


高い場所は嫌いではない。むしろ、眺めがいい場所は大好きだ。だが、ぐらりと揺れる観覧車は別だ。命の危険を感じる。


もし金具が緩んでいたら?
いきなり床が抜けたら?
強風で観覧車が倒れたら?


――死ぬ、絶対死ぬ。即死。ジ・エンド。


様々な恐怖が襲いかかってくる有里。


落ちたらどうしよう落ちたらどうしよう落ちたらどうしよう落ちたらどうしよう。


一段と揺れが強くなって固まる有里に、西田先輩の姿は目に入らない。その口元が笑っていることはおろか、視界にも入らない西田先輩。