沈んだ気持ちで森から教会へと戻る。

一気に現実に引き戻されるようで、この瞬間はいつも辛かった。



でも、また明日会えると思うとこれくらいは我慢できるようになった。


夕暮れのなか、教会を目指す。


そこでノエルは教会の様子がいつもと違うことに気がつく。

なにやら人が群がってガヤガヤと当たりは喧騒につつまれていて、嫌な予感がする。



「どいて!」


ノエルは人ごみを掻き分けて教会の中心に駆け出した。

人ごみの中から「焼き払え!」「また町にお金が入るぞ!」という声がノエルの耳に届く。



予感は的中した。



やつらは今夜あの森を焼き払うつもりだ。



教会の中心には黒い正装に身を包み嬉々として小さな小瓶と、魔術の本を抱える大人たちが居た。


「やめろ!森を燃やすな!!」


ノエルはその場からめいっぱい叫んだ。


大人たちが、こちらを向く。

魔術師のリーダーである父がこっちを見て、まるで神父だとでもいうような笑みを浮かべて笑う。



「ノエル。こっちへ来なさい。大丈夫だ。我々は神獣をラシッド様にささげ、森を燃やし、この町へお恵みをいただくのだ。悪いことなどしていないよ」



―悪いことをしていない?何を言ってるんだ?



ノエルは憎悪に満ちた目で父を睨んだ。



「今すぐやめろ、こんなこと…。森は燃やしちゃいけない」


そう言ってノエルは教会を飛び出した。