夏の月夜と狐のいろ。


それから数日。

今日はまだシアンが待ち合わせの木の傍に来ていなかった。


はやく、着すぎたかな。


ノエルは木にもたれて目をつむった。

風がサワサワと森の木を揺らして、心地よく頬をなでた。



ここはいい場所だ。
絶対に燃やしたりしてほしくない。ここには友達もいるのだから。


ノエルはそのまますやすやと眠ってしまった。






「-ル・・・エル」



小さく、自分を呼ぶ声が聞こえた。誰だろう。

ノエルはゆっくりと目を開いた。


「ノエル」


目を開くと、そこには一人の少女が居た。

綺麗な銀色の髪に、青い瞳。

そしてその頭には獣のものである耳がちょこんとのっていて、おまけに後ろからは大量の銀色の尻尾がふわふわ揺れていた。



「シアン・・・?」



それは、シアンだった。

やっぱりシアンは狐で、人間じゃなかった。

おまけにこの森の主の子供らしい。



シアンはよく笑う子で、ノエルはその笑顔を見ることでさらに心を癒された。

明日からこの笑顔を毎日見れると思うとノエルの心は躍った。






―このときはもう明日会うことはできないだなんて、そんなことは考えもしなかった。