夏の月夜と狐のいろ。




「森の外に、出してあげましょうか?」


草むらから、そっと声をかける。



「えっ!?」

目の前で、少年がバッと立ち上がって首をめぐらせた。

シアンはびくっとして身を小さくする。


しっぽがぶわっと膨らみ、緊張が走った。



けれどシアンはおそるおそる続けた。

「私は、この森に住むものよ。迷ったならだしてあげる」


人間は不思議そうな顔をして、返事をした。


「誰・・・?出してくれるの?」


シアンは返事が返ってきたことが嬉しくて震えた。


―私、人間と話してる!!



「うん、出してあげるわ」


すると人間は見えない姿に戸惑いながら、
頭をかきながら微笑み、言う。



「ありがとう。俺はノエル。君は?」


シアンは、一瞬答えるのをためらったけれど
少し考えた後答えることにした。



「私はシアン。内緒よ、私と話したこと。」


シアンがそういうとノエルは藍色の髪をゆらし、
にこっと笑って見せた。


「そっか、いい名前だね。わかった、内緒にしておく」


シアンは満足して尻尾をゆらした。

なんだ、人間っていい奴じゃないの!



シアンは上機嫌にノエルを外まで森の入り口まで案内した。