心臓が早鐘のようにどくどくと脈うつ。
頭の中につぶされたツキの姿が浮かぶ。
シアンは身をのりだしてツキの安否を確かめようと必死になった。
すると、岩の隙間から見慣れた茶色い髪がゆれ
ツキがさっと走り出てきたのが見えた。
―よかった!無事だったのね!!
シアンはほっとしてため息をつく。
さっきの岩のおかげで鎖がはずれたらしく
ツキの首にはちぎれた首輪だけがついていた。
ツキは脱走するようだ。
雨の中、すごい速さでツキは走っていく。
シアンは横の窓に移動した。
ツキが順調に走ってくる。
脱走が成功すれば、ツキは殺されずにすむのだ。
シアンが喜びと安堵に満ちた気持ちで
その様子をながめていると
現実にひきもどすかのように銃声が響いた。
人間たちが勘づいたのだ。

