夏の月夜と狐のいろ。




心臓が早鐘のようにどくどくと脈うつ。


頭の中につぶされたツキの姿が浮かぶ。


シアンは身をのりだしてツキの安否を確かめようと必死になった。



すると、岩の隙間から見慣れた茶色い髪がゆれ
ツキがさっと走り出てきたのが見えた。



―よかった!無事だったのね!!



シアンはほっとしてため息をつく。



さっきの岩のおかげで鎖がはずれたらしく
ツキの首にはちぎれた首輪だけがついていた。


ツキは脱走するようだ。


雨の中、すごい速さでツキは走っていく。



シアンは横の窓に移動した。


ツキが順調に走ってくる。
脱走が成功すれば、ツキは殺されずにすむのだ。



シアンが喜びと安堵に満ちた気持ちで
その様子をながめていると
現実にひきもどすかのように銃声が響いた。




人間たちが勘づいたのだ。