夏の月夜と狐のいろ。




恐怖の日々が続く。


そんなある日の夜だった。



激しくうちつける雨の音で
シアンは目を覚ました。


雷がとどろき、あたりを明るく照らす。


シアンは部屋からでて図書室に出た。



そしていつも見る物見ショーが行われる方とは
逆の窓をみつめた。


ここは、後からきいたのだが
牢屋が安置されている場所だ。


2回以上ショーにでると、外に出されるのだ。


そこには今はツキの姿もある。



激しい雨風の中、やはり牢屋は放置されていた。



(あのままじゃびしょぬれになっちゃうじゃない・・・!)



シアンはその適当な扱いに怒りをおぼえながら
ツキのいる牢屋をみつめる。



突然雷がとどろき轟音があたりにひびいた。



「きゃ・・・」



目がくらむほどの光と岩がくだけるような音に
シアンは耳をふさいで目をつむった。


人間よりもよくきく耳に
その音がぐらぐらと響く。



ようやく目が落ち着くと
シアンは再び窓を覗き込んだ。


何の音だったのだろう?



そして、窓の外の光景にシアンはぎょっとした。


ツキの牢屋半分が落ちた雷にくだかれ、壊れた崖から
崩れ落ちた岩に潰されていた。




「ツキ!!!」



シアンは、ここから声がきこえないことも忘れて叫んだ。