夏の月夜と狐のいろ。




「いいかげんにして!!」


シアンの銀色の尾が、きらりと鋭く光った。
その切っ先は刃物のそれだ。


ラシッドの喉にそれを突きつける。


けれどラシッドは怯えることもせず
ただにやりと笑った。



「お前は俺を殺せるのか?」



シアンのしっぽがびくりと揺れる。

その隙を見てラシッドはさっと後ろに飛びのいた。



「殺せないだろうよ。おとなしくここで1年過ごせ。
すべてはこれからだ。もっと辛く、嫌な思いをするんだからな。

これくらいで喚いてたら持たないぞ?」



ラシッドはそういうと部屋をでていった。




シアンは、ぺたりとその場にすわりこむ。


手が、震えていた。




こわい。
こわいよ・・・!


私はどうしたらいいの?