夏の月夜と狐のいろ。




「・・・う」


そこは、今度こそ本物の
図書室に設置されたシアン用の部屋だった。


さっきまでのようにあたりはきらめいておらず
落ち着いた感じの部屋だった。


おでこに、ひんやりしたものがのっている。


ぬれたタオルがおかれているらしい。


シアンがぼうっとしていると
目の前ににゅっとシロが顔を出した。


「わっ!!」

「大丈夫ですか?」


シロは心配するセリフを口にする。


けれどその赤い瞳にはやっぱり何の感情も浮かんでいない。


無表情な瞳がゆれ
シロが首をかしげると銀色の髪がそれをかくした。


シアンは、返事をしなかった。



頭にあの光景が再び浮かぶ。
助けをもとめるあの目が、表情が、頭にこびりついた。


「・・・」


シロは返事をしないシアンをしばらくじっとみつめたあと
部屋を静かに出て行った。



シアンはふるえながら頭まで布団をかぶって
小さく丸まった。



こわい。
あれがツキのいっていたものなのだとしたら
なぜ自分はこんなところにいるんだろう?


こんなところでじっとしていちゃいけない。

ツキを、ここにいる人たちを助け出さないと・・・!