夏の月夜と狐のいろ。




少し進んだところに、それはあった。


扉を開くと壁一面に天井までとどく本棚があり、そのなかにはびっしりと本が入っていた。

ほとんどの壁は本棚でうめつくされていたがよく見ると大きな窓が左右に2つずつある。


シアンはぽかんとその広い図書室を見渡していた。



ラシッドはさっさと前を歩いていく。


ぽかんとしているシアンを、シロがつっついた。


「行きましょう」



シアンははっとして頷き大量の本に圧倒されながらもラシッドのあとを追う。


すると、ひとつの机のところにつっぷして眠っている黒髪の少年がいた。


ここは、黒髪がおおいのかな?



「おい、クロ!起きろ!」



ラシッドが激しく少年を揺さぶると少年は不機嫌そうに頭をおこし、ラシッドの手を思いきり払った。


「僕に気安くさわるな!!」



少年はどなりつけ、ラシッドを睨む。


シアンは驚いて少年をみつめたがラシッドは慣れたように手をさすった。


「そう吠えるな。お前が悪いんだぞ」



ラシッドが文句を言うと少年は再びぎろっとラシッドを睨む。


ラシッドはため息をつくとシロとシアンに近くにくるよう招いた。



シロは機械的にシアンの手をひいてそれに従った。


シアンも、シロに手をひかれてそれに従う。



目の前にいくと、少年はシアンじろりと見た。