夏の月夜と狐のいろ。




「はじめまして。僕はシロンといいます。
シロとよんでください」


シロンと名乗る少年はぺこりとお辞儀した。

そして、機械的に顔をあげるとシアンをみつめた。


ラシッドと同じように赤い瞳がこちらを無表情にみつめる。


その瞳にはなんの感情もうかんでいない。


シアンはすこしたじろぎ、返事をせずにまごついたが返事を待つようにシロが見つめているので無理やり声をしぼりだすようにだした。



「はじめまして…私は、シアン、です」



シアンがようやく言うとシロはこくりと頷いた。


そしててくてくと歩いてラシッドの横に立った。


ラシッドは、怪訝そうに赤い瞳を揺らす。


「おい、クロはどうした?」


…クロ?
まだ誰かいるの?


シアンは首を傾げてちらっとシロを見る。



シロは少し首をかしげて思い出すようなしぐさをした。


そして、まだシアンが入ったことのない、
入り口とは逆の扉を指差した。