夏の月夜と狐のいろ。




シアンが何も言わず黙っていても男は気にしない様子だった。


「俺はここでまぁ…いろんな実験をやってる、ラシッドという者だ。」


男はそういうとおもむろにシアンの手をひいて部屋の真ん中へと歩き出した。


シアンは、大人しくついていく。



真ん中には、からっぽのカプセルのようなものがありそれはホルマリンで満たされている。



シアンはそのにおいに顔を歪めた。


ひどいにおいだ。


ラシッドはニヤッと笑って、一度ホルマリンを見たあと部屋の向こう側に目をむけた。


シアンは口を手でおおいながら、それを追う。



「…!」


そこにはシアンよりすこしくすんだ銀色の髪をした少年がいた。


年齢は、シアンが今化けている姿のものと同じくらいだ。


シアンがその少年をじっと見つめていると少年はラシッドに許可をとるように一度、目をあわせすぐにこちらに向き直って歩いてきた。



その動きは、どこか機械的だ。


シアンは違和感を感じ、頭をふる。


そうしてあいだにも少年はそばまできていた。