夏の月夜と狐のいろ。




その姿に、シアンはすこしポカンとした。


入ってきたのは、いつものごつい汚ならしい男ではなく小綺麗な白衣をきた男だった。


あまりみない、めずらしい黒髪をしている。

目には眼帯をしている。


男はゆっくりと近づいてきた。


横ではツキがびくりと身をすくめるが、その男はツキには見向きもせずにこっちへきた。



「お前が九尾の銀狐か。ははあ…」


そういうと男はじろじろとシアンを見つめる。

血の色みたいな赤い瞳が不気味だ。



シアンが威嚇するように喉の奥でうなると男は少しにやりと笑った。


「威勢がいいな。まだなにもしないからそう吠えるな。」


男はそういうと牢屋を開けた。


シアンは昨日のツキのようにひきずりだされるのを覚悟した。



だが、男は丁寧にシアンをかかえあげ、肩のうえにひょいっと乗せた。


ツキの驚いた瞳と目があう。


「たぶんもうここにはこれない。
友達なら、挨拶しておけ。」



男はそう、小さく囁くようにいった。