夏の月夜と狐のいろ。




ーガシャン


牢屋に響き渡ったそんな音でシアンは目をさました。

視線をあげると出ていく人間の姿が見え、自分のそばにはひときれのパンが置いてあった。


「…?」


シアンはそれを不思議そうに見つめる。

パンは、食べたことがない。

お父様にきいたことがあるが、実際に口にしたことはなかった。



ちらっと横を見ると同じようにツキのところにもそれは置いてあった。


だが、ツキは眠ったままだ。

においからして、血は止まったようだがシアンは少し心配だった。



いくら待ってもツキは起きないと思い、シアンはゆっくりとパンを口にはこぶ。



「…うぇ」


それは、パサパサして味気がなく舌のうえでかさかさとして不味かった。


お父様にきいたものとは少し違う気がする。


シアンは無理矢理残りのパンを飲み込むと牢屋の傍でひざをかかえた。


私はこれからどうなるの…?