夏の月夜と狐のいろ。




「ツキ……??」


シアンは、そっと呼びかけた。

だが、ツキはぴくりとも反応せずただ肩で息をしながら血を流していた。



息づかいが、深くゆっくりだ。



シアンは少し焦った。あまりにも呼吸がゆっくりなのでツキが死んでしまうと思った。



「ツキ、ツキ!しっかりして。」


シアンが何度も呼びかけるとようやく我にかえったかのように呼吸が速くなり、
ゆっくりと茶色の瞳がこちらに向けられた。



その目は、痛みと恐怖でにごっている。



「だいじょ……ぶ……だ、よ……」



ツキはそう小さく言うと、目を閉じてしまった。

シアンは牢屋のなかでうろうろする。


けれど、ツキの呼吸は安定していて、とりあえずはシアンはほっとして座った。



そして、再びおそってきた睡魔に意識を傾ける。


すこし、寝ないと。


明日は自分のばんかもしれない。


そう思うと恐ろしくてシアンは震えながら尻尾をひきよせ、目を閉じた。