夏の月夜と狐のいろ。




あれからどれくらいたっただろう。


少なくとも10時間以上は絶った。


再び訪れた暗闇の中で、シアンは怯えていた。



頭を必死にめぐらせてみても何もいい考えは浮かばず、時間は過ぎる。



脱走しようにもこの部屋には窓さえも見当たらない。


夜なのか、朝なのか。
それすらもまったくわからない。


それに、この牢屋の中ではどうやら千里眼の力も使えないようだった。



何度もツキが心配でツキに意識を集中させてみたが何かにさえぎられて景色は見られなかった。



さらに牢屋は固くて重い。


九尾狐のしっぽは刃物のように物をきりさけるのだがそれをもってしてもきりさくことはできなかった。



シアンは、その場にうずくまった。




怖い。


森に戻りたいよ・・・


お父様、リリィ・・・・


ノエル・・・



シアンは涙を流しながら目を閉じた。

体中が、疲れて悲鳴をあげている。