そんなことを考えながらシアンが待ち合わせの場所につくと、
もうノエルは来ていた。
「ノエ・・・・」
声をかけようとして、ふと気がつく。
ノエル、寝てる・・・?
ノエルは木に寄りかかり、すやすやと寝息をたてていた。
シアンはよくきく自慢の耳をぴくぴく動かし、寝息をきいた。
どうやら本当に寝ているらしい。
ひとつの考えが浮かび、心臓がどきどきした。
今なら、ノエルの傍にいっても大丈夫かもしれない・・・!
シアンはしばらく迷った後、もう一度寝息を確認すると
するすると木からおりて、ノエルの傍へ行った。
そして、顔をのぞきこむ。
「・・・!」
はじめてノエルの顔をこんなにも近くで見た。
綺麗な藍色の髪がさらさら揺れ、白い肌に花びらが落ちている。
シアンは、思わずにまっと微笑んでしまう。
いつの間にか、ノエルがこんなにも好きだ。
人間が、こんなにも好きだ。
嬉しくて、小さな声で何回もノエルによびかけてみたりもした。
寝ているから返事はないけれど、なんだかとっても楽しかった。
もう一度だけよびかけて、木の上にもどろう。
そう思って、小さな声でノエルの名をよぶ。
「ノエル」
どこかで、期待していたのかもしれない。
だからノエルがその呼びかけにゆっくりと
目を開いたとき、シアンは逃げなかった。

