『今日、人の子がこの森に迷い込んだようだ。
だが、その人の子は特にこの森に危害をくわえることなく去った。』
シアンはすこし俯いた。
お父様は、やっぱり気づいていたらしい。
シアンはどきどきしたけれど、シアンがノエルと話したことまでは
ばれていないらしい。
お父様は続けた。
『問題は、それではないのだが。
近頃、砂漠のほうに住む人共が、我らのような珍しい生き物を捕らえてまわっているようだ。』
シアンは驚いて目を見開く。
お父様は青い瞳を揺らした。
『この森は、まだ見つかっていない。
ここは安全だ。だから決してこの森からでるな。』
シアンは頷いた。
大丈夫。外には出なくても、ノエルと話すことは可能だ。
本当は人間と話すなんて、しちゃだめなんだろうな、と
そんなことを考えながらシアンはぼうっとティアドールの瞳を見つめていた。

