夏の月夜と狐のいろ。



『人間がすべて奪った!!森を燃やした!!出て行け!人間どもは出て行け!!嫌だ!嫌だ!もう奪われるのは嫌だ!!』


唸るリリィにシアンの声は届いていない。



リリィはますます身体の電気を強くした。
リリィの身体が、電流に耐え切れずにビリビリと傷ついた。



「やめて!リリィやめて!!シアンよ!私はここに居るよ!!」


シアンは子狐の亡骸を木の傍に置くと止まらないリリィの元へ駆け出した。


「やめろシアン!」

焦ったようなノエルの声が響くが、その声は苦しそうだ。

はやく、はやくしないと!


ノエルもリリィも傷ついてしまうわ!
はやくリリィを・・・私が止めないと!



リリィに近づくたび、電流が身体にびしりと触れる。
それでもシアンはリリィに向かって歩を進めた。



ノエルの叫びも、クロの声も遠くに聞こえるような気がした。





そして、指先がリリィに触れた。