夏の月夜と狐のいろ。



「なんだ今のは・・・!?」


シアンの横を、クロがものすごい速さで駆け抜けていく。


耳元で血がごうごうとなり、心臓が嫌な音を立てた。

ノエルに何かあったらどうしよう!!



だんだんとその光のもとにたどり着くと、その傍に魔術でそれを必死に防ぎながら何か言っているノエルの姿が見えた。
その傍の木にはきちんと母狐の亡骸が守るように置かれている。


とりあえずノエルが無事だったことに、ほっとする。



けれど、謎の電流をふせぐノエルの腕はギリギリと震えていた。


「シアン!危ないから来ちゃだめだ!」


ノエルはシアンに気がつくなり、そう叫んだ。


シアンは首を振ってノエルの居るほうへ駆け出す。

クロは、電流の元へ駆け出した。



「シアン!だめだ!」



ノエルはもう一度そう大きな声で叫んだ。


すると次の瞬間、一瞬だけ電流が弱くなった。


全員が、弱くなった電流の元をたどる。


さっきまでまばゆい光で見えなかった、その原因が見えた。



「リリィ・・・!?」



その電流を体中から発していたのは、見知った小柄な黒狐だった。