夏の月夜と狐のいろ。



「・・・埋葬してあげないと」


シアンがぽつりと言うとノエルが頷いた。


「俺も手伝うよ」


そういってノエルは母狐を優しく抱き上げた。
母狐の金色のしっぽがだらりとたれている。


シアンはノエルにお礼を言うと小さな子狐の死体を抱き上げた。


子狐の死体も冷たくて、硬くなっていた。



ほんとうに、ひどいわ。


シアンは怒りをおさえながら歩き出そうとしてふとクロが動こうとしないことに気がついた。


「クロ・・・?」


振り向くと、母狐が横たわっていたところをじっと見つめるクロの姿が目に入った。


狼の姿なので表情はわからないが、怒りに燃えるオッドアイの瞳がちらっと見えた。


冷静をよそおったふうに見えるが、尻尾の毛は激しく逆立っている。


そしてクロは顔をあげると憎悪に満ちた目のままちらっとノエルの背中をみて、再び歩きだした。



…今のはなに?

どうしてクロはその目でノエルを見たの?