夏の月夜と狐のいろ。



「あ・・・」


シアンはその場にしゃがみこんで、それに触れた。

冷たくて、硬い。


森に居た狐はみんなシアンとは顔見知りだ。


ここに死んでいたのは、あまり話したことがないけれどよく森で見かけた綺麗な金色の毛並みをした森の母狐だった。


綺麗な金色の毛は、今はすすに汚れてつやを無くしている。

そのまま触れていると、ふとその母狐のお腹の下に何かがあるのがわかった。




予想は、ついていた。


手足が怒りで震える。




母狐の体をゆっくりとどかすと、そこには小さな子狐の死体が二匹横たわっていた。


父は森の狐に鳥に化けて逃げろと言った。
けれどこの子達はまだとても小さくて、化けられなかったのだろう。


母狐とおそろいの金色のふわふわの毛は、守られてすすに汚れていない。



「・・・子供を守ったんだね」


横にノエルが来て、そう言った。


―ノエルの言うとおり、この母狐は押し寄せるねっぷうと炎から逃げられない子狐を守るためここに残ったんだろう。



悲しみと、怒りがこみ上げてきてシアンはぐっと下唇をかみ締めた。



ひどい・・・!
あまりに、ひどい。私たちが何をしたって言うの?