夏の月夜と狐のいろ。




クロの言った通り、この姿で行くと早かった。

丸一日走り続け、もう森に着きそうだ。


一面同じ景色の砂漠で方向を見失わないよう注意していたけれど、やがてその必要はなくなった。


どこからか焦げ臭い鼻をつくようなにおい。


シアンの尻尾がぶわりと逆立った。


森が燃えたのはもう数ヶ月も前なのに、まだ森はこげくさいにおいがただよっているらしい。


ドクドクと鳴る心臓を無視してシアンは足を速めた。



数分走ると、前に黒い何かが見えた。
つんとするにおいが増し、それが森だとわかった。




そしてついにシアンたちは森の前までやってきた。



森は、黒く焼け焦げている。

あの生い茂る緑の葉や、木々は見当たらず、ただ黒い炭になった倒木と灰が舞っていた。