夏の月夜と狐のいろ。




シアンは確かに、と思ってちらりとノエルを見た。

ノエルは貼り付けたような笑みでクロを見ていたが、シアンの視線に気がつくとやわらかく微笑んだ。



「ごめんね。俺が人間だから。」



シアンはぶんぶんと首を振った。


「いいの。あ、それじゃあ私が背中に乗せてあげるわ!
私、他の狼や狐より大きいの。大丈夫よ」



シアンはそう言うとぼふりと狐の姿に戻った。

ノエルが乗りやすいように、その場に腹ばいになってかがんだ。


自慢の銀色の尻尾が、風でそよそよ揺れる。
太陽の光を浴びると綺麗に輝くので、太陽の光を浴びるのは好きだ。



そのうちの一本で横で不満そうに唸っているクロの頬に触れた。


「クロ。唸らないでよ。別にいいんだから、気にしないで。」


クロはふんっと鼻を鳴らし、シアンの尻尾をぐいっとその鼻ずらで押しのけた。



「別に唸ってなんかいない」


シアンはため息をついてノエルが背中に乗ったことを確認すると
前を向いて走り出した。