夏の月夜と狐のいろ。




「涼しいね」


ノエルが横で、そう呟く。

この砂漠は、砂漠なのに涼しかった。

秋のような風がそよそよと駆け抜ける。



意外と道のりは長くて、この調子で行くと3日はかかりそうだ。



横でクロがいらいらとしたようすで尻尾をばさばさと振った。
見られる心配がないので、クロも尻尾や耳を出しているのだ。



「おい・・・この調子で歩いていくつもりか?」


クロはぎろりとノエルを睨んだ。


「なんで僕を睨むのかな」


ノエルは首を傾げてにこっと笑っている。



どうやらこの二人はなぜか張り合ってしまうらしい。

なんでだろう?とシアンはひそかに首を傾げた。



クロがぐるりとその場で回転して、狼の姿になった。
体の調子を確かめるように前足を交互に2,3度振り、体を震わせる。


そして、小さく唸った。



「意味がわからないのか?こっちの姿で行ったほうが早いと言ってるんだ。」