夏の月夜と狐のいろ。




ウルーは驚いてこっちを見た。


「ああ。知り合いだったのか」


けれど、ウルーは寂しそうな顔をした。


「悪い。もうここにはいないんだ。」


シアンは、一瞬しょんぼりとして俯く。

でも合えないことは寂しかったが、とてもほっとしていた。
ツキは無事だったのだ!


「いいの。無事だってきけて、ほっとしたから」

シアンがそういうと、ウルーはこくりと頷いた。


そして、ウルーはちらっとクロを見てすぐに俯くと低い声で言う。


「人間はひどいことするもんだな。別にすべてが悪い人間じゃないというのはわかるが、好きにはなれない。」



クロは喉の奥で低く唸って返事はしなかった。



ウルーも返事を待ってはいなかったらしく、すぐにこっちに向き直った。



「シアン、九尾狐ってことは・・・狐の庭から来たのか」


シアンはこくりと頷く。


同時に激しい悲しみがおしよせてきて、シアンは唇をかみしめた。
赤く燃え上がる木や、思い出を、忘れはしない。


思い出したくない。でも。



「森はもう、ないの・・・」



シアンはか細い声でそう答えた。