呆けたまま、その光景を見守っていて・・・。
ふと、奥方がジリジリと動き出すのに気がついた。
ずりずりと這いつくばり、大きな窓に向かって行く。
門川君もそれに気付き、上体を起こす。
あたしと彼は黙って奥方の姿を見ていた。
奥方の進んだ床の後に、濃く太い血の線が描かれる。
「死なぬ・・・死な、ぬ・・・」
うめくような奥方の声。
どこへ行こうというのか・・・。
もう、全ては終わってしまったというのに。
「わらわは、真の神の母・・・」
べたりべたり、と手の平を床に叩きつけ、渾身の力で奥方は窓に向かう。
這いつくばり、もがき、全身を霜に覆われて。
もはや命の終焉を迎えようとしているのが、手に取るように分かった。
ぶるぶると痙攣する手が窓辺に着いた。
笛のような断末魔の呼吸音を鳴らしながら、奥方は窓から外を見る。
大きな月が、夜空にぽっかりと浮かんでいた。
まるで手が届きそうに。
白銀に輝き、夜の世界を照らす。
地上の世界は見渡す限りの紅葉。
繚乱の錦絵が遥か彼方まで、色彩を誇り埋め尽くしていた。
暗闇に浮かぶ極上の屏風絵のよう。
ふと、奥方がジリジリと動き出すのに気がついた。
ずりずりと這いつくばり、大きな窓に向かって行く。
門川君もそれに気付き、上体を起こす。
あたしと彼は黙って奥方の姿を見ていた。
奥方の進んだ床の後に、濃く太い血の線が描かれる。
「死なぬ・・・死な、ぬ・・・」
うめくような奥方の声。
どこへ行こうというのか・・・。
もう、全ては終わってしまったというのに。
「わらわは、真の神の母・・・」
べたりべたり、と手の平を床に叩きつけ、渾身の力で奥方は窓に向かう。
這いつくばり、もがき、全身を霜に覆われて。
もはや命の終焉を迎えようとしているのが、手に取るように分かった。
ぶるぶると痙攣する手が窓辺に着いた。
笛のような断末魔の呼吸音を鳴らしながら、奥方は窓から外を見る。
大きな月が、夜空にぽっかりと浮かんでいた。
まるで手が届きそうに。
白銀に輝き、夜の世界を照らす。
地上の世界は見渡す限りの紅葉。
繚乱の錦絵が遥か彼方まで、色彩を誇り埋め尽くしていた。
暗闇に浮かぶ極上の屏風絵のよう。


