神様修行はじめます! 其の二

片手に高々と扇子を掲げ持ち、硬直する奥方。

その体にまるで寄り添うように密着する彼の姿。

手にした刀は、確実に奥方の肉体にめり込んで・・・。


ぴしぴしと音が立つ。

奥方の体が白い霜に覆われる。

全身、氷の結晶で装飾されたように。


刀は一息に抜き取られた。

反動で奥方の体がドサリと床に倒れる。

「・・・・ ・・・」


ひくひくと痙攣する体。

焦点の定まらない、ぼやけた視線。



門川君もその場に倒れこんだ。

四肢を脱力させ、全身が細かく震えている。

限界を超えたんだろう。

でも・・・


あたしにはまるで、彼がむせび泣いているように見えた。



おわった・・・・


終わったんだ・・・


その言葉だけがグルグルと頭を駆け巡った。


これで全てが終わった。

決着がついた。

何十年もの長い長い時間をかけて、やっとの事で。


たくさんの悲劇と苦悩を生み出した争いが終わった。


勝利・・・?

そんなもの、あるのかどうかは分からない。

ただ間違いなく決着はついたんだ。


満足感とか、充実感とか、喜びとか。

不思議になにも、浮かんではこなかった。



これで終わった・・・。


ただそれだけが確かな事だと、あたしは思った。