神様修行はじめます! 其の二

崩れた壁を越えた先に、吹き抜けの階段が見えた。

奥方がフラフラと、上へ上へと上っていく。

それを門川君が必死に追いかけている。

あたしも漆塗りの手すりにつかまりながら、なんとか追いかけた。


ふたりの流した血の跡が、点々と足元に続いている。

それを踏むように上へ上へ・・・。

額から汗がダラダラ落ちる。

がくがくする足を叱り飛ばしながら上っていった。


そしてついに最上階へ・・・。


ここは何階だろう。

数えてる余裕も無くて、まったく分からない。

耳に鈍い金属音が聞こえてきた。


あたしは最上階の板張りの床に両手をついて、転がりこむようにたどり着いた。

はぁはぁと激しい呼吸を整える。

金属音のする方向へ目を向けると・・・


門川君と奥方が斬り合っていた。

刀と扇子がぶつかり合い、お互いを跳ね返す。


ふたり共、もうさっきのような素早い動きはまったくできない。

鋭さの消えた太刀筋。

鈍りきった動作。

双方、限界を迎えていた。


最後の決着に向けて、死力を尽くして戦っている。


奥方の黒く焼け爛れた全身、だらりとほどけた長い乱れ髪。

崩れ落ちた化粧、血に染まって赤黒く濡れ光る背中。

幽鬼のように迫る表情。


門川君も頭からつま先まで血まみれだ。

動くたびに深い傷から鮮血があふれる。

激しく乱れる呼吸と、見た事も無い鬼気迫る表情。


もうすぐ、どちらかひとつの命が終焉を迎える。

その時が刻々と無情に迫っていた。