神様修行はじめます! 其の二

霞んでぼやける視界の端に、人影が映った。


・・・・・奥方っ!!?


ふらふらと今にも倒れそうな奥方が、部屋から逃れて行くのが見えた。


まだ生きている!!


「門川君! 奥方が・・・!」

「・・・・・!?」


門川君が振り向いて目を見張った。

なんてこと! あの傷で、あの体でまだ動けるなんて!

まだ終わっていない! 終わっていなかった!


奥方が・・・逃げてしまう!


「門川君、追って!」

あたしは叫んだ。

門川君はあたしを見た。

その目は心配と不安に満ちている。


「大丈夫。あたしも一緒に行くから!」

その言葉に彼はうなづき、ヨロリと立ち上がった。

刀を畳から引き抜き、ふらつく足取りで奥方の後を追う。


あたしも両手両足に力をこめて必死に立ち上がる。


行かなきゃ。追わなきゃ。

終わらせなければならない。

終焉を見届けなければならない。

こんな所で倒れてなんかいられない。


がくりと足から力が抜けて、胸に激痛が走った。

血の臭いが口の中に広がる。ムカムカする。

う・・・こんな・・・

こんな所で・・・


畳にギリリと爪を立てた。


倒れてたまるかぁっ!

根性見せろっ!! あたしの体――っ!!


あたしは立ち上がり、門川君の後を追った。