神様修行はじめます! 其の二

大きく肩と胸を上下し、美しい顔立ちも頭から血塗れている。

着物はズタズタに切り裂かれ、もろ肌があらわになってしまっている。

しなやかな腕や胸も、全身が傷で埋め尽くされて・・・。

足元まで自身の血でまみれて真っ赤に染まっていた。

悲惨で凄惨な姿。


真っ白で何も考えられないあたしの頭。

でもその姿だけはハッキリと認識できた。

門川君の姿だけは、はっきりと・・・。


「天内・・・く・・・」

赤い指先が伸びて、血だらけの両手があたしを抱き寄せた。

白い輝きが放たれる。

それは弱々しく、今にも消えそうな光りだった。

まるで蛍の光のように頼りなげに点滅する。

消えかけては振り絞るように、また光り始める。


・・・門川君、もう消耗しきっている。

なのに、なのにあたしに治癒の術を・・・。

門川君、門川君、門川君。


真っ白で空っぽな胸に感覚が甦ってくる。

彼を守れたのが嬉しい・・・。

彼が守ってくれてるのが切ない・・・。


「門川君・・・!」

動かなかったあたしの両腕に、温かい何かが通った。

そして彼の体を包み込む。

血でべったりと湿った感触。

ぎゅっと抱きしめ、あたしは彼の名を呼んだ。

門川君、門川君・・・!


涙があふれて視界が霞んだ。

唇がふるふると震える。


「天内君・・・」

万感の想いを込めて、あたしの名を呼ぶ門川君。

あたしは、声を上げて泣いた。