神様修行はじめます! 其の二

扇子が目にも鮮やかに舞い踊り、炎をすさまじい勢いで切り裂く。

一瞬で滅火の炎が消え去った。


ドンッ! ドンッ! ドンッ!

あたしの体が痙攣するように大きく脈打つ。

奥方の体をまた真っ赤な炎が覆う。

炎は爆発しそうに膨らみ巨大化した。


あたしの頭と体は、空っぽだった。

どこまでも真っ白で・・・なにも考えられない。

全身がビクビクと痙攣し、胸に激痛が走った。

ゴフッと口から赤い血が飛び出して足元に落ちた。


止まらない・・・トマラナイ・・・

ナニモ カンガエラレナイ・・・


「おのれえぇ! 小癪なあぁぁ!!」

奥方が炎の中で絶叫し、再び狂乱の舞を舞う。

炎が切り裂かれ消滅する。

風圧で周囲の壁や畳やガレキが舞い上がり、ぶつかり合う。


トマラナイ・・・

カレヲ・・・カレヲ、マモリヌクマデ・・・

トマラナイ・・・


滅火の炎が燃え上がり、奥方の体を幾度も飲み込む。

燃え盛り、躍り上がり、そのたびに消し去られ、また燃え盛る。

絶え間ない攻防のさなか、あたしの中は空っぽで、真っ白で・・・

口からは血が噴き、赤い花が咲いた。


「天内・・・天内めがぁ~・・・」

炎の消えた隙に、よろよろと奥方が近づいてきた。

豪華絢爛な着物は黒くボロリと煤け、お白粉は醜く崩れている。

綺麗に結われた髪はほつれ、乱れきってしまった。

凄惨な姿で、目ばかりがギョロリと光っている。